共謀罪創設に反対する関東教区声明


 私たちは共謀罪の創設に反対します。
 政府は、東京オリンピック・パラリンピックのテロ対策と偽って、「テロ等準備罪」として共謀罪創設を企図しています。国際組織犯罪防止条約批准を口実にしていますが、条約はマフィアなどの国際暴力団を抑止するためのもので、テロ防止とは無縁ですし、すでにテロ防止関連条約と国内法整備は完了しています。内実は、市民社会の言論批判活動や民主主義を求める市民運動などを監視し、介入し、弾圧することを目的にしています。
 政府は憲法9条の改憲を目指し、平和国家を「戦争のできる国」にしようとしています。特定秘密保護法、安保関連法、盗聴法など立て続けに制定し、ついに戦闘状態にある南スーダンに自衛隊を「駆けつけ警固」として派兵しました。憲法に違反するため戦闘はできず撤収しましたが、法律によって憲法をなきものにする企図が明確です。
 そこで次に市民の内面の自由を監視する目的で共謀罪を創設することになりました。戦時中、戦争反対を唱えた人々が、「非国民」として獄に繋がれたことを想起します。国体変革を唱える共産主義者を取り締まるとして治安維持法が成立しました。一般人は対象にならないとしていましたが、「目的遂行罪」を加えて、文化サークル活動も宗教団体も弾圧の対象になった歴史的事実を忘れません。
 共謀罪は、罪刑法定主義(憲法31条)の近代刑法の法体系を破壊して、犯罪が起きる前から処罰の対象にしていきます。戦争・人権侵害・差別などに反対する活動を捜査機関が「好ましくない」と判断すれば、その時点で集会に参加することは処罰の対象になります。犯罪が起きる前に処罰をするには証拠が必要ですから、捜査機関の拷問による自白の強制、監視カメラによる監視、メールなどの盗聴が日常化し、捜査機関の監視・介入が市民生活に深刻な事態をもたらします。私たちキリスト者が信仰に基づいて自由に、合法的に活動することでも「組織的犯罪集団」と認定されると、捜査対象になります。
 共謀罪は、監視社会をもたらし、市民的自由を窒息させ、市民の自主的な活動を委縮させ、捜査当局に広範な取り締まり権力を与え、戦争への道をひた走る政権に強力な武器としての治安立法を与えることになります。
 再び国家が内心の自由とりわけ信仰の自由に介入することのないように、私たちは共謀罪の創設に反対します。

[2017年5月31日(水) 第67回関東教区総会にて可決]



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