部落差別をなくすことをめざす関東教区基本方針


はじめに
 
関東教区では1978年に「部落差別問題特別委員会」が設置され、全国水平社以来の歴史を持つ被差別部落出身者の自主的な解放運動と連携をはかりながら、部落差別問題に取り組んできました。しかし、まだまだ私たちの教会の宣教の課題にまでは至っていません。

 教会の使命は、神が御子イエス・キリストを通して私たちに示された福音の宣教にあります。御子は全人類の罪のために十字架に掛かり、罪を購い、復活して私たちの神との和解の喜びを与えて下さいました。これは人と人との真の交わりを阻んでいた壁を破壊し、私たち人間の世界に、真の平和と愛と喜びをもたらすものです。教会は、このような福音をすべての人々に宣べ伝える使命を主イエス・キリストから与えられて誕生しました。
 教会の内外にあって、今なお、日本国憲法で保障されている基本的人権が保障されずに差別の中で苦しんでいる被差別部落出身者の現実を深く受け止めることなく、私たちは伝道・牧会をしています。これは被差別部落に対する差別行為であり、人権を踏みにじる行為であると認めます。「すべての人々に福音を宣べ伝えよ」との主の御委託に対し不誠実な行為であったことを、主の御前に悔い改めを持って告白します。

 現在も部落差別問題は未解決であり、私たちの教会にも部落差別は存在しています。教会における差別事件や教会員の被差別部落への否定的評価はなお克服されていません。

 関東教区の全ての教会は、部落差別問題を解決するために、これを福音宣教の課題として取り組み、差別−被差別の関係の変革をめざすとともに、教会の内外にある部落差別の実態を学び、神から与えられた基本的人権を侵害しようとするあらゆる力と闘い、部落解放をめざします。

T 基本認識
 部落差別問題は被差別部落出身者に対して歴史的・社会的に否定的評価を下し、排除し差別することによって、その市民権的諸権利と自由を侵害してきたことにあります。従って、その解決は、日本国憲法の基本的人権を保障し、人間の尊厳を確立することにあります。さらに世界人権宣言や各種の国際人権条約の人権思想をふまえて、国の内外の人々が平等に生活できる原則の下に民主主義社会を実現することです。
 このことは、関東教区にある地区・教会・関係団体・関係者すべての福音宣教の課題です。

U 目標
1)部落差別から解放された個人になり、部落差別を拒否する生き方(信仰)を養い、連帯の輪を広げます。
2)部落差別の現実に届く信仰や宣教を追い求め、部落解放・人間解放に実践的に働く教会をめざします。
3)非部落・被差別部落双方の共通課題として取り組みを進めます。
4)現地交流を基盤に連帯をはかり、共同作業を通して差別−被差別の関係を変革します。
5)さまざまな差別に反対する人々との輪を広げます。

V 具体的取り組み
1)関東教区における被差別部落の置かれている実態や歴史・生活等を認識します。
2)教会員の被差別部落に対する認識状況を把握し、問題や課題を明らかにします。
3)部落解放を担う人々の育成を体系的に行います。

W 推進体制
 関東教区常置委員会が推進母体となり、地区・教会・関係団体と連携しながら推進します。部落差別問題特別委員会は常置委員会の決定に基づいて、企画・調整・奨励・援助等によって条件整備を行います。地区・教会・関係団体は基本方針に基づいて主体的に実践し、部落解放に向けて働きます。

[1998年5月20日(水)第48回教区総会にて可決]




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